笠岡の地で 第一章

E-veが書くギャグ夢小説です。

ではどうぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前いつからワシの嫁になったんじゃ」

 

 

大悟の気迫に押され気味なノブが返した

「すまん」は千鳥の長い迷路が始まる合図であった。

 

きっかけは、本当に些細なことだった。

2019年某日。この日はテレビ千鳥の収録である。

ノブは収録時間の20分前に楽屋入りし台本を手に取った。

 

収録時間まであと5分だという時にノブは思った。

 

「大悟はまだなんか」と。

収録時間になっても大悟は現れずノブはプロデューサーやディレクター、その他の番組スタッフに謝罪した。

ノブは相方の遅刻に対する苛立ちを隠せなかった。

それから実に40分後、意識が覚束無かないのか千鳥足で歩く大悟がノブの元にやってきた。

 

「何しとったん」とノブが聞く。

大悟は「すまん、飲み潰れて寝てもうた」と口からレモンサワーの匂いをさせて言った。

 

「何やっとるんお前。慣れてるスタッフさんやから許してもらえる思うてるやん。」

「甘えとったな。すまん。酒も抜けてきたし、もうすぐ収録してしまおう。」

 

大悟はスタッフの目から見ても反省しているし謝罪もしているので早く収録を始めようとスタッフが動き出したその時

 

「お前もう酒あんま飲むなよ。体にも悪いんやから。タバコも」

ノブが吐き捨てるように言った。

これが大悟の逆鱗に触れ、充血した赤い目でノブを睨みつけながら

 

「お前いつからわしの嫁になったんじゃ」と言う。

 

ノブも己の発言に違和感を感じてかすぐさま「すまん」と詫びた。

 

「わしこそすまん。ちょっと頭冷やしてくる」と喫煙所のある廊下に繋がっている扉にへそを向け歩き出す大悟。

 

その後番組収録こそしたが、現場の空気は海の中の砂ほどに重かった。収録を終え二人は一言も言葉を交わすことなく次の仕事に入った。

 

今度は劇場での漫才。二人の漫才の際によく見る大悟のアドリブやそれに伴う二人の笑いなどは無く、ただ淡々と、流れ作業のようにネタを済ませた。

 

それから二週間が過ぎるが二人の関係は修復されず、『最近千鳥の仲が良くない』という噂が芸人たちの中で広まった。

千鳥の楽屋から大声が聞こえる。喧嘩だ。番組収録でいまいち笑いを取る事が出来ず、この日初めて両者が己の感情のままに相手を蔑み怒鳴りあった。

その後冷静になった大悟が言った。

「もうええ。今ある仕事終わったら千鳥はしばらく休憩しよう」

ノブは「本当はそんな事はしたくない。大悟と仕事をしていたい」と心では思いながらも「分かった」と少し枯れた声で言った。

 

『相席食堂』。火曜深夜のナイトinナイト枠の番組でMCは千鳥が務めている。

ほぼ冷戦状態にある二人がMCを務める番組が面白くなるはずもなく…。

 

 

 

『ちょっと待てぃ!』


撮影も終わり、1人スタジオに立ち竦んでいたノブがボタンを押した。ボタンからはあの、千鳥ノブだった頃の自分の声が聞こえた。過去の自分すらも憎いと感じた。


ノブは「ワシはお前がおらんと…」と呟いた。もうあの頃に戻れないんだと目に涙を浮かべ立ち尽くしていた。


その姿はまるでノブでは無かった。『早川信行』だったのだ。

 

 

 

 

一方の大悟は喫煙所に居た。


「本当に千鳥休止するんすか?大悟さん」一緒にいた同じ吉本の後輩であるダイアンのユースケが聞いた。

大悟は口にくわえていたタバコを手に取り、煙を吐きながら「もうどうしようもないて」と小さな声で言った。

 

続け様に「これは2人の問題やから」と言い手に持っていたタバコをくわえた。これ以上何も話したくない。そう思ったのだ。

それを悟ってかユースケは「すいませんでした…。ほんなら失礼します…。」とそそくさに喫煙所を去っていった。

 


「ほんまにどうしようもないんか……?なぁノブ…」と大悟は喫煙所で一人、千鳥の行く末を思いながらそう漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続かない